歴史をつなぐリノベーション
店主の高齢化を理由に閉店した70年以上続く老舗喫茶店〈マルイチ〉を未来をつくるサロンとして継承したプロジェクトのインテリアデザインを担当した。
芸術・文化を愛する人が集まる社交場として一世風靡した内観は重厚なボールドのアーチゲートや有機的な装飾が特徴的で品格のために敷居の高さがあった。当時の重厚で文化的な香りを残しながら、若い人も入りたくなるよう、引き算のデザインを考えた。エントランスの床はビニルタイルを剥がし、タイル模様が効果的に見えるよう煉瓦をイメージさせる透明塗装をかけ、壁天井は象牙色の砂混じりの塗装で塗り替えた。アーチや段天井の形状は生かし、小さく存在感のある局所照明とさりげない全般照明にすることで空間に陰影をつくり、既存装飾を造形として浮かび上がらせた。入り口に鎮座する黒光りしたショーケースは、真鍮板で貼りぐるむことで印象を変え、新しい経年変化を楽しめるようにしている。
施工:コネクト